二度目は誠実に
沙弓は小さくため息をついてから、拓人を真っ直ぐ見る。真っ直ぐと見る沙弓の瞳には意志の強さを感じる。


「お断りしたはずですけど」


「なんで? 理由を教えて」


「本気だとは思えないから、大石さんの言葉が信じられません」


「いやいや、これでも本気だし、俺は大真面目なんだよ? だからー、すぐに答えを出さないでね、せめて食べている間だけでもいいから、考えてさ、デザートが出てきたときに考えた答えを教えてよ」


拓人なりに誠意を見せた上でのお願いだった。何日もダラダラと考えて、答えを出させるのでは沙弓の時間を束縛してしまう恐れがある。

食事中の短時間ではあるけど、すぐに答えを出すのではなく少しでも考えることをして欲しかった。

しかし、そんな拓人なりの誠意は沙弓に伝わっていなかった。これから美味しい料理を食べるというのに、その間素直に味わうことをさせてもらえない。

食事をする前にそんな申し出をされてたら、美味しいものも美味しいと感じなくなる。

……憂鬱な食事の始まりである。

最初のスープから全く味を感じられなかった。
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