二度目は誠実に
沙弓があげた名前の二人は以前から要に憧れている。分かりやすく接近していたこともあるから人事部への異動なら大喜びで行ってくれるだろう。


「いや、あの二人は部長が嫌がるよ」


「でも、即戦力にはなると思いますよ」


「そうは言ってもねー。部長についてもらうのではなくて、俺についてもらいたいからね。俺は谷がいいんだけど」


「でも、そうしたら誰が私の後を継ぐんですか?」


沙弓が人事部に行くとなると、今総務部でやっている業務を誰かに渡さなければならない。しかし、それを出来そうな人がいない。みんな忙しくしている。


「あ、そうそう! 肝心なことを忘れてたよ。谷には今まで通り、総務部に所蔵していて、時々人事部を手伝ってもらいたいんだよ。つまり兼任ねー」


沙弓には簡単に兼任だという拓人が信じられなかった。今の業務に別の業務を足せとは、あり得ないことだ。仕事を増やされて喜ぶ者なんかいない。


「兼任だなんて、何を考えているんですか! 冗談じゃないです!」


拓人の無茶な要求に沙弓は怒って、テーブルに手をついて立ち上がった。
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