二度目の初恋
結局、デパ地下で2人でも食べきれないほどの料理とワインを買い、

打ち上げと言って自宅で飲むことにした。


だが・・・円は何だか落ち着かない様子で伏せてあるフォトフレームをチラチラと見ている。

もしかして見た?

たしかに伏せてある時点で不自然だし、家政婦だから掃除をしていたら気になって見るだろう。

案の定円はフォトフレームをみた。

だが意外にも俺の事を気にしていたのには驚いた。

俺は亮太が写っている写真を見せたくなくて伏せていたが

円は俺がしおりの事を吹り切れてないと思っていたらしく気を遣っていたのだ。

しおりに対して友達以上の感情はもうない。女優としてのしおりを応援していると言うと

どこか遠くを見るような目で

「・・・本当にそんなふうに思える日がくるのかな?小さい頃から何十年も思い続けた
亮太に対して時任さんの様に相手の幸せや成功を心から祝福することなんか・・・できるのかな?」

と円は下を向く。

だから俺は言った。


新しい恋をすればいいと・・・


言うのは簡単だが、それが出来ないからこういうことになっているわけで・・・

言った後でもうちょっと配慮すべきと少し後悔した。

俺がしおりの事をふっきれたのは新しい恋を見つけたからと思ったようで

そういう相手がいるのかと円が尋ねた。


好きな相手にこうもストレートに聞かれるのはなんとも複雑なものだ。

だけどここは正直に本人向かって

片思いだがいると答える。

すると円がかなり驚いた様子で視線を反らしたのを見逃さなかった。


もしかして・・・脈あり?

都合の良い解釈をしてしまいそうになるが今日の円の亮太を見る目を思い出し

その思いをかき消した。

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