ダブル王子さまにはご注意を!



「大変なことになってるよ、中西さん。君がフリューゲル王国のお妃候補ってテレビで流れて大騒ぎだ」


郁美のところに(オマケで私のお見舞いに)来た早乙女さんが、真面目な顔で教えてくれた。


そりゃそうだ。家電店はテレビを一日中つけっぱなしだから、仕事中でも報道の内容を知ることができる。


「うちの店でもかなり話題になってたね。“まさかあの中西さんが”って人が多数だったし。正直な話ぼくも意外だったけど、よかったね!相手ができて」

「……そうですか」


早乙女さんの失言はもう慣れたものだ。以前は正直に教えてくれて、信頼してる? って胸をときめかせたけど。今じゃ彼はよく物を考えず、ストレートに言ってるだけって解ったから。


「けど、大変なのはこれからよ」


一緒に遊びに来てくれた郁美が眉を寄せる。彼女はほとんど病室で過ごしたせいか、世間知らずではあるけど。少なくとも早乙女さんよりは気遣いが出来た。


「夏樹さんはきっと本気ですわ。何があってもあなたをお妃に迎えるお覚悟があって、敢えて危険を侵してまで公表されたのです。真由理さん、あなたはそれにきちんと抗えますか?」

「…………」


きっと私よりは双子のことを理解している郁美の言葉は、誰よりも的を射てる。私はすぐに返事はできなかった。


「え、ナツキ? え??」


と狼狽える早乙女さんはともかく、気まずいまま彼女との時間は過ぎていった。


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