守神と大黒柱と示指?

2.守り神と喧嘩

事故が起きたのは、わしがたまたま天国に帰っている時に起きてしまったのじゃ。

だからといって見て見ぬ振りをしたわけではないぞぉ。

天国からだと遠すぎてわしの神通力も届かなかったのじゃよ。

それにしても、「まぁ仕方がないとあきらめてくれ」と守り神が言うと。

「左手の指が使えないと和竿が作れないよ」と、大黒柱が言う。

守り神が、「命まで取られなかっただけ、良とせょ」。

「いやだ、嫌だ!」と大黒柱。

「まだ、分からんのか?自分のミスではないか」と言う守り神の言葉に、大黒柱はヒートアップしていく。

「何てこと言うんだ。人生設計が台無しになったんだよ」「元に戻してくれ!」と言ってしまった大黒柱。

「…わしが使えるのは神通力だけじゃ!」「魔法は、使えんので、元に戻すようなことはできんのじゃ」。

向こうの方で、大黒柱がこっちを見て、興奮する度にびっくりした顔になるが、興奮を抑えようとか、逃げ出すようなことはしない。

やっぱり、大黒柱が感情的に興奮してくると守り神であるわしが見えてくるようじゃ。

極端に驚いているようでも無いので、そのままにしておこう。

興奮指数が極限まで行って、大黒柱が切れてしまったら風船が萎んでいくように、わしの姿が見えなくなるから大丈夫じゃ。

色々不思議なことが起きるものじゃ。

さらに、人差し指を切断した後で不思議なことが起こっておる。

今も、普通の人間には見えないはずの守り神が大黒柱には見え、話すことができ、口喧嘩をしている。

確か、その時に人差し指のことを医者は「示指」と電子カルテに入力しておった。

大黒柱が、「先生「示指」と「指示」を間違っていますよ!」と、言っておる。

どうやら、医者は間違いでは無いようじゃ。

さらに、医者には理解できないことが起きたのじゃ。

じゃが、示指は地面に落ちた瞬間から意思を持って誕生してきたのだから。

この世界で、見たり、聞いたりしたことを意思の強さに変換する能力があったのじゃ。

指を切断してから、妻が示指を拾ってくれたり、長男がその指を冷やしてくれたり、お婆さんが留守番してくれたり、近所の人が心配して来てくれたり、医者や看護師多くの人の優しさを見てきた。

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