プロポーズ

森田沙織は、もともとはあたしたちの仲良しグループにいたのだが、リーダー格の女子に嫌われて、仲間はずれにされた。

あたしたちの仲は、そのまま修復されることなく、卒業を迎えた。

沙織はあたしのとまどいには気づかない様子で、


「ね、久しぶりに会ったんだし、うちへ寄って、お茶でも飲んでって」


昔仲間はずれにされたことを忘れてしまったのか、そう言って、あたしを誘った。


あたしは今、けっこう落ちこんでいる。三十歳にして職を失った。

今日はこの近くの小さな会社に面接に来て、帰るところだった。

面接官の態度から見る限り、たぶん不合格だろう。

あたしは独身だ。このまま帰っても、アパートにはだれも待っているわけではない。


沙織が強引だったこともあって、結局ついていった。


行って驚いた。

なんとなくボロアパートを想像していた。

とんでもない。少し古びているが、ちゃんとしたマンションだった。

< 2 / 6 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop