私は貴方に、叶わない恋をした。【続編】
【2】二人の距離
あの日から二週間、その間にヤスの姿を見かけることはなかった。
屋上に行ってもいない、廊下でもすれ違わない、学校にいても不思議なぐらい会うことがなかった。
「…ヤスの携帯番号知らないしな」
最後にヤスが発した言葉が、やっぱり気になってしょうがない。
¨もう迷惑かけないから¨
あれは、もう会わないってこと?
「あーゆーみっ!!」
「!?」
いきなりドンっと背中を押された。
「び…びっくりした…真奈、脅かさないでよ」
「だって、麻由美が美術の課題見つめてぼーっとしてるから」
「え?」
あ、そうだ。
今は美術の授業中で、この課題を完成させないと冬休みが補講になってしまう。
「麻由美、また美術の補講になっちゃうよ?」
ドキ!
いや、あれは意図的に補講にしたのであって…
そんなこと言えないけど。
「大丈夫、大丈夫。後、色塗りだけだから!まにあ…」
「ちょっと!!!誰よ、ここにインク零したの!?シンナーくさい!!ヤバい!!」
一人の生徒が大きな声で叫んだと思ったら、美術室にシンナーの臭いが充満する。
「おい!窓際の奴!!窓開けろ!!」
沢先生の声が聞こえる。
「麻由美!開けよ!なんか気持ち悪くなってきた」
「うん」
たまたま窓際の席に座っていた真奈と一緒に窓を全開に開けた。