俺様副社長のターゲット
私は尚輝の腰に腕を回して抱き締め返した。



「朱里、俺たちの再スタートだ。」


「うん。」



耳元で囁く心地のよい声に大きく頷いた。


抱き締められていた体が離され、尚輝を見上げた。近付いてくる尚輝の顔に目を閉じた。


すぐに離れる唇に目を開けて尚輝を見つめる。



「久しぶりのキスだな。」


「ふふっ、何年振り?」


「折角だ。もう少しして………。」


「おい、誰だ?」



尚輝の背後から聞こえてきた声に二人の体が揺れた。


二人で視線を向ければ教師が立っていた。



「おい、誰だ?」


「すみません。ここの卒業生です。つい思い出の場所に来てしまいました。」



尚輝が体ごと振り返り、冷静に教師に答えている。私も隣に並んで頭を下げた。



「勝手にすみません。懐かしい場所だったので。」


「………。恋人の場所って言われてるからね、ここは。」


「先生、すみません。もう帰りますから。」


「気を付けてな。」



先生が私達に背を向けて歩いていく。
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