中山くんと……
友達の原口くん

とある喫茶店でコーヒーを飲む中山くん。

本日は、大学の時からの友人
原口くんと待ち合わせです。

原口「よお、久しぶり」

中山「久しぶり。元気だったよ、俺」

原口「まだ聞いてね〜し。元気だったか?」

中山「さっき言ったろ? 元気だよ。相変わらず 耳が悪いな、原口」

原口くんは、中山くんの向かい側に座りコーヒーを頼みました。

中山「ところでなんだよ、話って」

原口「あ〜実はさ」

中山「間に合ってる。数珠とか仏像の類いならいらない」

原口「なんだよ、数珠って」

中山「大体、同級生が久しぶりに呼ぶ時は、宗教の勧誘か、ネズミ講か、保険の営業に決まってる」

原口「俺をそんな奴だと思ってんのかよ。失礼だな、おまえ。第一、おまえとは、割と会ってる方だから。そういうのは、もう少し付き合いの浅い奴にやる奴だから」

中山「なるほどな。じゃ、ヤクルトの営業か?」

原口「俺、ヤクルトレディじゃね〜し」

中山「じゃあ、なんだよ」

原口「いや、結婚をな、しようかと」

中山「悪いが、俺にはそういう趣味がないので、おまえと結婚出来ない」

原口「おまえと結婚したいって言ってね〜よ。勘違い野郎だな。相変わらず」

中山「なら、誰とだよ」

原口「この前紹介しただろ。亜紀だよ」

中山「あ〜テクニシャンの」

原口「テクニシャンってなんだよ。なんかされたのかよ。全く違うよ。エステティシャンだよ」

中山「どっちでも俺は構わないよ」

原口「俺が構うよ。ばーか」

中山「で、そのテクニシャンな女がどうした?」

原口「エステティシャンな、そろそろ俺も30だし結婚しようかなぁ〜って」

中山「30か。歳だな」

原口「おまえも同じだから。同級生だから」

中山「いや、おまえの30と俺の30じゃ違うから。おまえの場合は犬の歳の数え方と一緒だろ?おまえは。30って言ったら相当なジジイだぞ」

原口「俺も人間の歳の数え方だから。普通に俺もそうだから」

中山「そうなの? 俺と同じ? なんか地味にやだなぁ」

原口「今知ったみたいに言うな。そして、今更嫌がるな」

中山「で、なんの話だよ。グッチ〜」

原口「グッチ〜って呼んだことないよね? なんで今そう呼ぶんだよ」

中山「じゃあ、いつ呼べばいいんだよ」

原口「別に呼ばなくていいよ。一生」

中山「そうなの? いや、親しみを込めた愛称みたいのが原口にないから、つけてあげたくて」

原口「じゃあ、別に呼んでいいよ」

中山「そーいう別にいいとか投げやりに言われると俺凹むタイプ」

原口「難しい奴だな、全く。じゃあ、呼んでくれよ。グッチ〜って」

中山「グッチ〜って呼ばれたいのかよ。なんか地味に恥ずかしい奴だな、おまえ」

原口「いやいや、おまえがグッチ〜って言ってきたんだからな」

中山「まあ、名前の由来はいいや」

原口「由来の話、これっぽっちもしてないよね」

中山「そう? じゃあ、なんの話してた?」

原口「結婚だよ。俺がエステティシャンの亜紀と結婚しようと思ってな。おまえに友人代表の挨拶を」

中山「え〜俺が友人代表なの? 他にいないのかよ。友達すくね〜な」

原口「そんなこと言うか? 普通言わないよな」

中山「俺、心にもないことは言えない」

原口「なんだと?!おまえに頼もうとした俺がバカだったよ。あ〜ムカつく」

中山「おめでとう! 喜んでやらしてもらうよ! とか恥ずかしいから面と向かって言えない」

その後、原口くんは中山くんを思い切りハグしました。

原口「なんだかんだ言ってお前は、いい奴だよな!」

中山「なんだかんだ言わなくても初めから俺はいい奴だよ」

原口「だよな。ありがと、中山」

中山「いや、ブスの彼女によろしく」

原口くんは、ハグしていた中山くんを突き放しました。

原口「人の彼女をブスとか言うな。もっと丁寧に言え」

中山「原口くんの、おブスな、お彼女に、およろしく」

原口「お前ふざけてんの?」

中山「まあな。俺、嬉しいと反対のこと言うタイプだから」

原口「反対? じゃあ、キレイってことか?」

中山「まあ、ブス同士のカップルで」

原口「美男美女のカップルでってことだよな?」
中山「全然羨ましくない」

原口「すごく羨ましいってことか! なんだよ。こいつ、可愛い奴」

ガバッと中山くんをハグする原口くんなのであった。



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