アラビアンナイト
内心アワアワしながら、このまま逃げるべきか、それともそっと扉を閉めるべきかグルグル考えていたら、アラブ装束を身にまとった少年がふとこちらをむいた。
頭に被せられた真っ白な布から見える髪は瞳と同じく艶めいた黒で。
スッと通った鼻筋と意志の強そうな口元。
でも、何よりも私の心を捉えて離さなかったのは、バチッと合ったその瞳だった。
気を抜くと飲み込まれてしまいそうな錯覚さえ覚える瞳に見つめられて、きっと私は息をするのも忘れていたに違いない。