できちゃった出産【ベリカフェ版】
 私はといいますと――正直「可愛い」という感覚はありませんでした。「大事」ではあるんですよ、本当に。ただ「心の底から湧きあがる愛おしさでいっぱいになる」というような状態にはなりませんでした。

 おそらく、未知なるものへの怖さというのもあったでしょう。赤ん坊なんて育てことはありませんし。周りで育てているのを見たこともない。また、怖いという感情には「畏怖」というニュアンスも含まれていたように思います。

 自分のような人間が母業に携わるなどおこがましい。そんな気持ちがいつもどこかにあって、喜びや愛しさを感じるより、責任の重大さに押しつぶされそうになっていました。まあなんというか、往生際が悪にもほどがあるって話なんですけどね(苦笑)

 結局、母性なるものの発動が認められないまま月日は流れ、子どもは小学生になりました(笑)「赤ちゃん可愛い」という感覚はわからずじまいです、ハイ。

 こんな文章、ひょっとしたらお叱りを受けてしまうかもしれませんね。子どもに申し訳ないと思わないのか、とか。子どもが知ったら悲しむとは思わないのか、とか。或いは、子どもが大好きなのに授からなくて悩んでいる人もいるというのに無神経ではないか、とか。

 言い訳に聞こえるかもしれませんが、子どもに対して「申し訳ない」という罪悪感はいつも心のどこかにありました。母性の欠落が子どもにどう影響するのか不安で、びくびくしながら気負っていたところもあるでしょう。

 ただ、自分の欠陥(母性の欠落を欠陥と言い切るのはあれですが……)を率直に認識した上で、周囲の人たちの適切な支援を得ながら「客観的に、安全に」やってきたのも本当です。

 えーと、ちょっと硬めの文章になっちゃいましたかね……(汗) つまり、何が言いたいのかというと――「たとえ母性本能が発揮されなくても、いろいろとやりようはあるみたいだよ?」という話なのです。

 ちなみに、当方「授かり婚」ではありません。「結婚してからずいぶん時間もあっただろうに、まーったく覚悟もできてないとは何事じゃっ」という……(汗)

 まあまあまあ、とにもかくにもです。悩み癖のあるメンタルこじらせ系の三十代女性が、優しい人びとに助けられながら、妊娠・出産・育児にまつわるクエストをどうにかクリアしていくさまをご笑覧いただけたらと思います。

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