できちゃった出産【ベリカフェ版】
 職場へは電車通勤していました。といっても、時差出勤でしたのでラッシュでもみくちゃになるということはなかったのですけどね。それでも、帰りの電車は帰宅の人で込み合うこともありました。

 そんなとき、席を譲ってくださる優しい方がいらっしゃいました。本当にありがたいことだなぁと思いましたよ。私は貧血とも無縁でわりと元気な妊婦だったと思うのですが、それでもありがたかったですよ。その優しさが素直に嬉しかったですし。

 それに、元気な妊婦とはいえ、急停車による転倒とか怖いですからね。妊娠中期は安定期といわれますが、お腹も出てきますし。初期の頃よりも転倒などの外的要因に気をつけなければいけないんですよね。

 私はおそらく本当に運がよくて、電車の中でも席を譲っていただくことがけっこうありました。今思い返してみると、声をかけてくださったのは若い人ばかりでした。沿線の大学の学生さんでしょうか。若い女性はとくにマタニティマークに敏感に気づいてくださって、声をかけてくださいましたよ。

 ちなみに「お姉さま方」はというと……(苦笑)むしろ、男性のほうが優しかったくらいです。先日、某テレビ番組でも同じような話を聞きました。女性のコメンテータの方ですけどね。子育てを終えた年輩の女性こそ妊婦に対して優しくない、と。

 まあいろんな気持ちがあるんでしょうけどね。自分が若い頃は世間はもっと厳しかった、とか。自分たちは厳しい中を耐えて頑張ってきたのだから、おまえたちも甘えるな、とか。なんですかねぇ、こう言い方もあれですが「女性の敵は女性」というか……(汗)あーあ、自分も女なわけですど、ほんっと女ってなぁ(苦笑)

 もちろん、一概には言えないと思いますよ。実際、思いやりのある素敵なお姉さま方はいらっしゃいますもの。子どもに優しく声をかけてくださったり、子連れで外出する大変さに共感してくださったり。経験者だからこその優しさをもって接してくださるかたがいらっしゃるのも本当です。

 その後も妊娠の経過に問題はなく、私は36週まで仕事を続けさせていただきました。その間、周り人たちには本当にたくさんの元気と勇気をいただきました。

 その頃はもう「妊娠を素直に喜べない自分」とはある程度折り合いがついていたと思うんです。でもやっぱり「完全に」ではないのですよね。そういった中で、職場の方々の温かい祝福は私の救いでした。

こういう言い方はお叱りを受けてしまうかもしれませんが――。

私は素直に喜べていないかもしれないけど、世界は祝福してくれている、と。

他力本願、ですかね……(汗)

 妊娠が判明した当初は、「おめでとう」「嬉しいね」と言われることを、どこか辛く心苦しく感じていました。けれども、少しずつ心境は変化していったんですね。

「喜べていなくてごめんなさい」から「喜んでくれてありがとう」と。

 自分を責めることはやめて、周囲の人たちがくださる祝福に素直に感謝するようになりました。そうして、筆頭協力者の自分にしかできないことを、粛々とやっていこうと思ったのでした。

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