できちゃった出産【ベリカフェ版】
 その小さな小さな命の芽生えに感動した、というエピソードは妊婦のあるあるかと思いますが。私はそういう熱い感じではなかったですね(子よ、申し訳ない……)。なんていうのかなぁ、もっとこう不思議な気持ちで見ていた気がします。あ、今『飾りじゃないのよ涙は』の歌詞が頭をよぎったあなたは同世代ですね(ニヤリ)。

 まあまあ、それはともかくとしてですね……。えーと、たぶん感動したというより、感嘆したというニュアンスのほうが近かったのかもしれません。「私の可愛い赤ちゃん!」というより、「生物の発生ってすげー。とにかくなんかすげー。よくわかんないけどすげー」みたいな? こんな妊婦はおそらく少数派だろうなと思います……(汗)

 検査のあとすぐ、再び診察室で説明がありました。そうそう、内診室へ夫は一緒に入らなかったんですよ、確か。おそらく希望すれば同伴できたでしょうし、入れてあげればよかったのかもしれませんが。何しろ自分、気ぃ利かない人間なんで……。

 そのときはぜんぜん考えもしなかったんですよね(夫よ、すまぬ……)。旦那さん同伴で健診に来ている人、よく見かけたものでした。だいたいの病院でOKみたいですしね。

 先生からはあらためて、とくに問題はなさそうであることや、推定の週数についてなどの説明がありました。

「そういうことですので、ご妊娠の継続にはとくに問題はないかと思います」

先生は穏やかな口調で静かにそう言うと、先ほどのエコー検査の画像をプリントしたものをくれました。

「次は一週間後に受診していただいて、そのときまた様子を見させてください」

そうして診察は終了しました。

 診察の間、先生は決して「おめでとうございます」という台詞を言いませんでした。またまたドラマの話になりますが、ドラマの中だと、ドクターが「おめでとうございます。妊娠○週ですね」とにっこり笑って患者に告げるのが定番かなと思います。でも、E先生はそうではありませんでした。

< 9 / 86 >

この作品をシェア

pagetop