部屋に出るもの
部屋に出るもの

「あの部屋、出るみたいなの」


しおりからそんな相談を受けたのは、水曜日のことだった。



しおりは同棲していた男の暴力から逃れて、小さなアパートに引っ越したばかりだった。

そこは都心から離れた場所にある1DKの部屋で、家賃も割安だった。

ところが、引っ越した当初から、どうも夜寝苦しい。

部屋の中に、自分以外に誰かいるような気がする。

なにか憑いている部屋なのかもしれない、と思った。

オカルトの本で読んだことを参考に、部屋の隅に盛り塩をしてみたが、効果はない。

そのうち、都内の大学へ通う妹さんが泊まりに来た。

なにかいるかもしれない、ということは教え、布団をならべて寝た。

その晩も寝苦しかったが、とりあえずは眠った。

朝起きると、妹さんの様子がおかしい。

――ゆうべ、なにかあったの?

と訊いたが、

――なにも。

としか答えない。

なにかを隠しているように感じられた。

(もしかしたら、妹は幽霊を見た。でも、あたしを怖がらせまいとして、嘘をついてるんじゃないかしら)

と、しおりは想像した。
< 1 / 5 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop