溺愛されてもわからない!

さよなら
私がずっと住んでいた
愛する町。

山も川もイノシシも
サルも鹿もウサギも
可愛いタヌキもさようなら。

大切な友達も

さようなら。

車がどんどん田舎を離れ

砂利道からアスファルトに進化し
サルも鹿も見当たらなくなり

家の数が増えて
信号の数が増えて
車の数が増えて

朝が昼になり
昼が夜になり

小さな小さな町から
普通の町に移って
大きな町になって

都会に近づく。

寒くないかい?
お腹空いてない?
何か飲みたくない?
地下に閉じ込めて口を割らせろ。
心細いかい?
海に沈めるって脅せ。
トイレは寄らなくていい?
チョコ欲しくない?
出すものはない?臓器は公平にあるだろう。
椿さんとすみれさんを幸せにするよ。

所々
携帯で何か
ちょっと違和感ある発言をしていたけれど

和彦さんは後ろの私達を何度も何度も振り返り
仔犬のような目をして
私達に優しく語りかけてくれる。

基本優しいんだよね。

やがて

車は家に着く。




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