溺愛されてもわからない!

たい焼きは熱々で美味しくて
水無月君はそんなしゃべりじゃないけれど
会話には困らず
学校の話とかクラスの話とかしてくれて嬉しかった。

ハスキーボイスが心地よい。
なんだか
たい焼き食べながら
今までにない気持ちになってる私。

フワフワしてる。

「一夜と兄妹って事は、あの家に住んでるって話?」

ギクリ。そうです組長の家です。
ごにょごにょと口ごもってたら

「堂々としてろよ。逆にうちのクラスでそれバレたら尊敬されるぞ」

「そうなの?」

「就職希望が沢山いるよ」

就職?面接官は田中さんだろうか。
いやいや
まっとうな世界じゃないからダメですよ。

「しばらく黙っていたい」
切なく訴えたら笑われた。

あ、今日初の笑顔。貴重な笑顔。

「一夜がいい奴でよかったな」

「いい奴?あんなタラシのエロ王子が?」

「エロ王子って」

また笑われてしまった。
もっと笑って欲しいな。水無月君の笑顔っていいなぁ爽やかで。
あぁきっと私は
爽やかさに飢えているのかもしれない。
あの家に住んでいると
爽やかさには無縁だから。
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