溺愛されてもわからない!
すんごくすんごく時間をかけて
私は月夜と手を繋ぎ
たまにハイハイなどして
ふたりでゆっくりと屋根の上を歩き出す。
途中でお母さんが二回ほど下で叫んだけど、無視してへっぴり腰で目的のベランダまでやってきたら、和彦さんが月夜を抱きしめて受け止める。
お母さんは私をギュッと抱きしめて「無茶しないでよ。こんなに身体が冷たくなってる」って涙を流す。
ごめん。心配かけた。
私と月夜はきっとこの後説教だろう。
和彦さんの説教って長そう。
お母さんは次に和彦さんに抱かれてる月夜の頬を触って「心配させないで」って言う。すると月夜は「お母さんごめんなさい」と、緊張が解けたのか大泣き。そしてつられて私も大泣き。
ごめんなさい。
私も口には出さなかったけど
月夜と同じ事を思っていたよ。
自分はこの家でいらないんじゃないか……って。
違うんだね
月夜に話してわかったよ。
誰もが誰かの大切な人。
いらない子はいない。
私も家族の一員だもの
堂々としてればいいんだ。
みんなそろわないと家族にならない。
たとえ
血の繋がりはなくても
家族だよ。
みんなの愛情をもらってるのに、気付かないでひねくれちゃって、ダメなお姉ちゃんだ。
「すみれちゃん」
一夜が月夜の頭を撫でてから
私の元にやって来た。
「命の恩人。ありがとう」
一夜に真正面で真剣に言われてしまって
私は恥ずかしくなって首を横に振る。