溺愛されてもわからない!

お昼前までふたりで話をして
名残惜しく帰ろうとする私を、家まで送ってくれた夢君。

家の近くまで来て
「夜に電話する」って言ってくれた。

私は「うん」って返事をして
夢君の背中が見えなくなるまで目で追って、玄関に入ると一夜に遭遇。

一夜はこれからお出かけで
完璧すれ違い。

「出かけるの?」

「そう」

そっけない返事。

「今ね、夢君と話をしてきたの。もう大丈夫だから、あとは私が雫さんに……」

「僕はもう関係ないから」

ブラウンのブーツを履いてサラリと私にそう言う一夜。

「もう報告いらない。すみれちゃんには夢がいるからもう大丈夫。考えたら僕は必要ない。どんなに僕がすみれちゃんを好きでもムダだよね。誰にも渡さないつもりだったけど、あっさり夢を選んだから」

こんなに突き放されたのは初めてかも。

今までずっと
どちらかといえば
ベタベタ溺愛系の一夜が別人のよう

「家族としては付き合う。問題ない。じゃ……あ、勉強するんだよ。僕の学校の方が少し進んでるから、参考になるようなプリントを田中に渡しておいた。後は田中に聞いて、すみれちゃんの実力なら今から勉強して……睡眠時間はないと思った方がいいよ。田中にしっかり言っておいたから大丈夫」

「一夜が教えてくれるんじゃなかったの?」

「田中が教える。彼もドS系だから気合入れて勉強するんだよ」

「どこに行くの?」

「女の子のとこに決まってる」

当然って感じで私に言い

一夜は外に出て行った。


別人のようで……寂しく思うのは違うかもしれないけれど


寂しかった。
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