溺愛されてもわからない!


学校は明日からでもいいって言ってくれたけど
なるべく早く
この町に慣れたい。

努力しよう。
お母さんの幸せの為に頑張ろう。
朝食の後にシャワーを浴び
さっぱりして気分一新!

『一緒に行く』ってお母さんも和彦さんも言ってくれたけど、私は断りひとりで登校。

新しい人生の第一歩
ひとりで頑張ろうぜ。

今日は田中さんに学校の手前まで送ってもらう。
帰りも迎えに来てくれるって言ったけど
けっこう家から近いし
わかりやすい道だったので断る。

「すみれさん。これを」

田中さんは車から降りる時
私に小さなシルバーな物を手渡した。

手のひらサイズの細長い物で
磨かれて綺麗。
けっこうズッシリ重いのね。

これ何?お守り?

田中さんはそれを簡単に組み立て
一瞬でそれは鋭い刃を私に見せる。

「何ですかこれ?」

「バタフライナイフです。護身用に」

田中さんは真剣な目をして私の手に握らせ、くれぐれも気を付けるようにと、何度も何度も念を押して帰って行く。

バタフライナイフ持って登校って
冗談じゃないっ!

私は慌ててカバンの奥に隠して深呼吸。

さて
新しい第一歩。


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