Turquoise Blue 〜空色のベース〜


「ちょ…先行かないでよ!!」




− 夕方のホーム

夜の住人達が
昼間とはうって変わった様相で
電車から降りてくる

香水のにおいがキツい



『彼』は人込みを避けながら
スタスタと先に行ってしまう


…こういうトコで
彼女いた事ないんだろうなって
わかる

…歌やる前は
ちょっとオタクっぽかったみたいだし

…私も彼氏いた事ないけどさ…

だって

お父さんだって少し嫌な時ある
弟だってうるさいし

クラスの男子は皆
馬鹿な話ばっかりしてるし
マキちゃんとかと遊んでる方が
百倍楽しいもん


…去年はずっと
加藤先輩が好きだったし…





『降りたの どの辺?』


「え あ えっと

…あのまま反対側が出口になって
急いで降りたから…
わかんない……」



『じゃあ ここ』

ゴツゴツ と 片足を踏み鳴らす



『後10分で来る

急行だし、人も多いから
駅員も中に入って回って見られない

警察にも届いて無いって事は
あのまま電車と一緒に走ってるか
誰かが持って行ったって事

後者だったら諦めろよ』



「…警察?」



『トイレ行った時
ついでに聞いて来た』


「………」


『これ逃したら
もう間に合わない

よく捜せ』



「う…うん!!」





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