クールな彼の甘い融点~とろけるほど愛されて~


自動ドアをくぐろうとした手前で話しかけられてしまい、仕方なくそちらに視線を移す。

井村さん、そして元彼とその友達の視線が私に留まっていた。
こうなってしまえば、店内に入り助けを呼ぶことはできない。

「……こんばんは」
「瀬名さんっ、助けてください、この人たちがしつこくてしつこくて困ってたんですっ」
「……助けようとしてたんですけどね」

井村さんのせいで台無しだ。
独り言をつぶやいてから、仕方なく近づく。

近づけば近づくほど、井村さんの元彼と友達の身体が大きくて、うわぁ……と思う。

倉沢さんくらいの標準体型ならまだ逃げるとかいう選択肢もある。
でも、これは……力比べになったら間違いなく負ける。

逃げようにも、その前に捕まりそうだ。

「なにこの子。亜美の友達?」
「でも、タイプが違いすぎないか?」
「俺も思ってた」

ニヤニヤしながら見定められてムッとする。
顔立ちが可愛く目立つ井村さんと普通の私じゃ、たしかに派手さが違うにしても、こんな風に面と向かって言うのはどうなんだろう。

「瀬名さん、こいつらがしつこいんです。私、全然その気ないのに元さやがどうのって」

私の腕にしがみついてくる井村さんが言う。

「あの……関係ない立場でこんな話に立ち入るのもどうかとは思うんですが……。井村さんもこの様子ですので、お引き取りいただけませんか?」

気分を悪くされてしまっても困る。

恐る恐るといった感じで言うと、元彼たちはおかしそうに笑い出す。
見てる方が不愉快になる、嫌な笑い方だ。



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