クールな彼の甘い融点~とろけるほど愛されて~


「北岡さん、注文したいんで端末貸してもらえます?」
「ああ、いいわよ。してあげる。何番?」
「10-12-5。ふたつお願いします」

八坂さんが数字を読み上げると、北岡さんがピッピと打ち込んで「クリームあんみつをふたつね。了解」と答える。

それから、端末を置いて私を見て苦笑いを浮かべた。

「まぁ、さっきの八坂さんの説明は直接的すぎるけど、だいたい、そんな感じです。実際は、役員の娘だから優遇されてるなんてこともないんですけど。
広田さんって発言がちょっと上からだから、周りの女性職員ともうまくいってなくて」

「そうなんですか……。たしかに、関係がギスギスしちゃうのは仕事がやりにくいですもんね」
「ねぇ。ただ、他の女性職員は、共通の敵がいるせいか結束してるみたいですけど。ほら、女性ってそういうものでしょう?」

意味深に笑みを浮かべる北岡さんに、ははっと乾いた笑みを返した。

襖がノックされ、追加したメニューがどんどんと運ばれてくる。
そのなかにあった、ジンジャーエールを受け取る。

八坂さんと北岡さんも、それぞれビールを受け取り口をつける。

「やりにくいだとか、共通の敵だとか。北岡さんは違うんですか?」

『他の女性職員』なんて、自分以外って言っているように聞こえたから聞くと、北岡さんは、ゴクゴクと喉を鳴らしてビールを飲んでから答える。

いい飲みっぷりだ。
上司がいたら喜びそう。


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