きたない心をキミにあげる。
慣れた手つきで愛美は花束をお墓の前に刺し、線香の準備をしている。
俺は不思議な気持ちでいっぱいだった。
弘樹はここに眠っているのか。
「圭太、しゃがめる?」
「んー。ちょっと時間かかるかも」
「じゃーお先」と言いながら愛美はかがみ、パンパンと両手を鳴らした。
え、それ作法合ってる?
と突っ込む前に彼女は立ち上がった。
「早くない?」
「だって骨が入ってるだけじゃん」
「骨って。まあそうだけど……」
「私の知ってるお兄ちゃんは、私の中にしかもう存在してないから」
「……そっか」
俺も愛美に松葉杖を渡し、ゆっくりと姿勢をかがめる。
先に手を、次に左膝を芝生に落とし、右足は軽くだけ曲げた。
まわりと同じ、腰くらいの高さの角ばった墓石。
静かに手を合わせ、弘樹に想いをはせる。
線香の匂いが鼻をかすめた。
弘樹……お前は苦しんでいたんだよな。
どうしてもっと話してくれなかったんだ?
俺もごめん。もっと深いところまでお前と向き合っていればよかったな。
全てから解放されて、安心して眠って大丈夫だよ。
今までありがとう。
そう、心の中で彼に伝えた。
澄みわたる青空とは裏腹に、心の中には黒いもやもやが広がっていった。
俺は、一体、何をしにここまで来たのだろう。