きたない心をキミにあげる。



あの事故からおよそ1ヶ月が経った。


自力で動けるようになった俺は、退院し自宅療養することになった。


久しぶりの家での時間は、病院にいるよりも気が休まった。


もちろん松葉杖は必需品で、右足はギプスで固められたままだけど。



「うーん」



いろいろ考えまくった結果、佐藤愛美には


『水越圭太です。退院しましたm(__)m』


と、マッチしているか分からない顔文字を付け加えたメッセージを送っておいた。


授業中なのか、返信はなかった。




「はぁ……勉強ついてけねー」



高校からの膨大な課題に疲れた俺は、母に録りためてもらったアニメを見ることにした。


クッションの上に右足を乗せ、リモコンに手を伸ばす。


良かった。今期で一番楽しみにしてたやつ、ちゃんと最新話まで録画されてる。


へーやっぱり原作と違うとこもあるけど、作画含めていい感じだな。

声優もマッチしてるし。


そう思いながらぼりぼりとチップスを食べつつ、鑑賞していたが。


テレビからトラックのエンジン音が聞こえた。



――うっ!



急にどくん、どくん、と心臓の音が全身に響いた。


だめだ。この先のシーン、見たらダメだ。


この主人公が異世界に行くことになるきっかけは――。



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