きたない心をキミにあげる。



弘樹はくだらない話も、ぐちぐちした話も、気に入ったアニメの話も、いつも嫌な顔一つせず聞いてくれた。


ちょっと気になる女子に彼氏ができた時には、

『圭太ならすぐいい彼女できるって』と慰めてくれた。



ただ、俺は弘樹の何を知っていたのだろう。


よくつるんではいたけど、どこかいつも彼は遠いところにいた気がする。



やっと一つだけ深い部分を知ることができたのは、彼がいなくなる直前だった。



誰にも秘密にしてる、大切な人。


それが、彼の妹、佐藤愛美だったこと。



『私が知らないお兄ちゃんのこと、いつか教えてほしいな』



俺も、俺が知らない弘樹のこと、佐藤愛美から聞きたい。



だって、俺は一生背負って生きていかなければならない。


佐藤弘樹が確かにこの世界に生きていたことを。



< 37 / 227 >

この作品をシェア

pagetop