カルマノオト
あの頃から彼はギターを手にし、音楽というものをこよなく愛していた。


だけど、きっとそれは趣味の域でしかなかったはずで、彼はもっと大きな目標を掲げてあの大学に在籍していたはず。




今の彼はミュージシャン。





医者になりたくて医学部に入った。


しかも彼は、この大学にこだわって二浪もしたと私たちに話したはず。




私が北医療大を受験したきっかけも彼。




遠い記憶の片隅に追いやられ、もう忘れかけていた刹那の恋。


縮まらない歳の差に苛立ちながらも、きっと当時の私は精一杯恋をしていた。
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