眼鏡とハンバーグと指環と制服と
「弁護士さん!どうにかならないんですか!?」

「どうにもなりませんねー」

「そこをなんとか!」

「そういわれましても……」

弁護士さんを拝み倒してみたけど、やっぱりいい返事は出てこない。
なつにぃはやっぱり、ふふって笑ってみてるだけだし。

「ここの土地、もともと市の持ち物なんです。
君子さんが亡くなって借地契約も切れたんで、一週間後には出て行ってもらわ
なければなりません。
それまでに決めておいてくださいね」

弁護士さんはそういうと、忙しくもないくせに
「忙しい、忙しい」
と出てない額の汗を拭いながら帰っていった。

「ゆずちゃん、困ったねー」

そういいながらも、なつにぃの口元は、嬉しそうにゆるんでる。
長めの前髪がかかった、眼鏡の奥の目も、細くなってる。

「そんなに、僕と結婚するのは、いや?」

……首を横に、こてん。

こんなに可愛い男が現役高校教師っていうのが、不思議でしょうがない。
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