眼鏡とハンバーグと指環と制服と
……えっと。
振袖は独身じゃないと着れないんだっけ?
あー、でも、まだその辺は秘密だし。

「あの、でも、あの場って誰かの奥さんとかがほとんどで、振袖とか派手なの
着ていくのはちょっと、勇気がいるっていうか……」

「そう?
派手とかその辺は、着付けでなんとでもなるから。
紫子さんってなんか、上品な振袖着てた記憶があるんだけど……」

そういっておばさんが探し出したのは、黒地に淡いピンクの桜がちりばめてあ
る振袖だった。

「そういえばこれ、おばあちゃんの婚礼衣装だったっていってたわね。
夕葵ちゃんが成人式のときにも着せるんだーって」

「そう、なんだ……」

私の記憶にないお母さん。
そのお母さんが、私が着るのを楽しみにしていた着物。
きっと、おばあちゃんも楽しみにしてたんだろうな。

「夕葵、ちゃん?」

「え、あ、なんでもないです」

……いけない、いけない。
しんみりしてちゃ。

「それで、どうする?」
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