眼鏡とハンバーグと指環と制服と
あれから随分と、おじいさまと仲良くなった。

おじいさまは私に、若い頃随分やんちゃした話とか、お父さんが小さい頃——
まだ、芝浦の家に引き取る前の話をしてくれる。
おじいさまにとってその頃が一番倖せだったみたいで、その話をするときはほ
んと楽しそうだ。

……だけど。

話し終わったあとの淋しそうな顔に、ちょっとだけ胸が痛んだ。

おじいさまは自分が話したことの引き替えじゃないけど、私がどんな生活をし
てたか聞きたがった。

おばあちゃんや夏生のことを話すのは楽しい。
改めて、私は凄く愛されてたんだな、って思った。

結婚してからのことを話すのは避けてたんだけど、おじいさまがどうしても聞
きたがったから、それも話した。

話してる最中はそのときのことを思い出して嬉しかったけど、話し終わったあ
との喪失感が半端なくてちょっと困った。


そのうち認定試験の結果が出て……驚くことに、全教科合格。

「夕葵さん、頑張りましたね」

「柏木さんのおかげです」

合格発表の日。
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