暁天の星


「この家に来たからには、もう怖いものなんて何もないよ。」




優しく笑う里香ちゃんに、僕はちゃんと頷けていたかな。




ああ、みんながこっちを見てる。


視線を温かく感じたのはいつぶりだろう。



アキラの目が僕達を大切だと言ってる。


その頼もしさに全てを預けられた。



間違いないよ。





今、みんなに着いて行こうと思えるから。






「いつだって那月のことはわたしが守るから。存分に無茶して一緒に成長していこう。」





今思えば、ここまで何かに護られていたような気がしていたのも、漠然とした安心感も、晃のこの言葉があったからで。




あの言葉に救われていたのだと、知らぬ間に心の糧だったのだと気づくまで随分時間がかかった。




そんなふわふわしたものを信じようともしなかったのに。








ただ確かなことは、僕を産んでくれた親じゃなくて、見つめた先にあった強い眼差しが、いつだって僕たちを護ってくれていたよね。






その手を握り返せる時が、いつか、来るかな。




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