まさか…結婚サギ?
夏菜子と結愛のアドバイスをうけて由梨は昼に貴哉に電話をした。
ワンコールして切ると、少ししてから電話がかかってきた。
『由梨』
「忙しい時にごめんなさい。あの、ちょっと相談があるんですけど、今日の夜は時間行けますか?」
『相談?どうかしたの?』
「ちょっと…困ったことになってて…」
『分かった。時間を作るから、仕事が終わったら待ってて?』
「はい」

由梨は貴哉と通話を終わらせると、ほう、と息を吐いた。

そして、夜の仕事を終わらせると由梨は渉に声をかけられた。
「今日はデート?」
「あ、というか、ストーカーの事を相談しようと思ってて」
「まだ、相談してなかったわけ?」
渉が軽く眉を上げる。
「うん、そう」
「待ち合わせ何時?」

「仕事の都合があるから」
「じゃ、一緒に待っててやる」
「でも、それだとなんと言うか…」
元カレと今カレと会わせるみたいで、躊躇う。
「向こうは俺が元カレなんてしらないだろ?」
「あ、それもそうか…」

由梨は渉と共に近くのcafeに入って時間を潰した。

「今までの写真はどうしてる?」
渉に聞かれて、由梨は100円のアルバムをカバンから出した。
「…これ、ちゃんとファイルしてんだ?」
「だって、警察に持っていったし、もし何かあったら証拠になるでしょ?」
「由梨は意外と現実的なんだよな…」
くくっと渉が笑う。

「あ、ちょっと待って」

由梨のスマホが貴哉からの着信を告げる。

「もしもし、貴哉さん?」
『どこ?』
「いつものcafeにいますよ」
『ん、すぐに行く』

大体近くにいたのか、貴哉がすぐに入ってくる。
貴哉は由梨の前にいる渉を睨み付ける。

「貴哉さん、えっと」
「こんばんは、まず、誤解の無いように言いますが、俺は彼女がストーカー被害にあってるので、貴方が来るまで一緒にいただけです」
由梨が貴哉の怖いオーラに気圧されていると、渉がサッと立ち上がり説明した。
「ストーカー…?」

「そうなの…、その事を相談しようと思って」

「…相談…」
貴哉は渉を見た。
「由梨は…こいつに裏切られたんじゃないのか?」
「え?」
「だから、浮気した元カレとなぜ一緒なのかと」
「…どうして、知ってるの?」
「いや、何となくそんな気がしただけだ」

「先日から、ソノダクリニックの医師が休暇を取ってるので代理で勤務してました。では、俺はこれで」
「あ、ありがとうございました」
由梨はペコリと頭を下げた。

「貴哉さん…怒ってる?」

空気がとても、冷たく凍りそうだ。

「なんで俺よりあいつに先に相談するんだ?」
「たまたま…写真が見つかって」
「昨日も、一緒にいた?」
「駅まで、送ってもらったの」

「今朝は俺のパソコンに、送られてきた」
「え?」

「えっと…最初に来たのは、前に貴哉さん家に泊まった次の日」
由梨はアルバムを見せた。
「警察にも行ったんだけど、これだけじゃなにも」
貴哉が美女といる写真を見つけて手を止める。

「これ…気にしてた?」
「うん…美人だし、何だかお似合いだし…それに…悠太くん、だったかな?仲が良さそうとか聞いたから」

「こいつは、椿だ。このときに例の事きっちり話をした。何だったら、呼び出してもいい」
「椿さん…」

「俺のパソコンに、送ってきたと言うことは、だ。社内の人間の可能性が高い。待ってろ、すぐに止めさせてやる」

その言葉に由梨がゾクっとしたのはきっと気のせいじゃない。青い炎というか、そんな静かな怒りの炎が見える気がした。
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