嘘つき天使へ、愛をこめて
「あたしのママって凄いね」
告白して、浮気して、譲って、振る?
どんだけ自己中な人なんだろう。
「いや、ちげえよ。咲妃はさ、今のお前と同じ時期に病気が発覚したんだ」
「病気」
「そう、サリと同じ。で荒れちまった。あのどうしようもねえ男に引っ掛かったのも仕方ないって言えるほど、あの時のあいつは荒れてた」
「あたしとは違うのね」
病気が発覚した時も、死へ近づいているこの瞬間も、あたしは常に冷静だったのに。
「お前を身篭っていると気づいた時、もう既に病気は発覚して余命宣告も受けていた。それでも産むって決めたんだよ。私が自分の代わりに残す命だって」
けれど、なんて皮肉なものだろう。
そうして産んだ娘さえも、同じ病気になって母親よりも早く命を奪われようとしている。
「咲妃は腫瘍が出来た位置が悪かった。手術での摘出は不可能で、それでも少しでも長生きするためにって、延命治療を始めた」
「あたしを産んでから、五年間?」
「ああ。頑張ったよ、咲妃は」
ママはあたしをこの世に残して旅立った。
ならばあたしは何が残せる?
何もないあたしに、いったい何が残せるの?