嘘つき天使へ、愛をこめて


「金なら俺がどうにかする。それに家族ならもういるだろ。胡蝶蘭のメンバーは、もうサリのことを家族だと思ってんじゃねえのか」


「……どうかな。でも、なら尚更あたしはここから離れなきゃいけない」

「サリ……っ!」


「ねえ大翔、なんで大翔が胡蝶蘭の所に行けって言ったのか、今はなんとなく分かる。あたしに家族を作ってくれようとしたんだよね」


大翔は答えない。

それは恐らく肯定を示しているからだろう。


かつて大翔の彼女だったママは、きっと最後まで大翔を好きだった。


でも、あたしには、分かる。

好きだったからこそ、大翔から離れたのだ。


自分が死んでしまうと分かっているから。

自分が死んでしまっても、大翔はこれから先何年何十年と生きていかなければならないから。


傷つき傷つけあっても、ママが選んだのは大翔から、大切な人から離れることだった。
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