(A) of Hearts
チートなスペード

♡♡♡♡♡♡



とうとう来てしまったよ日曜日。

一時はどうなることかと思ったけれど、以前にも増して芦沢さんは精力的に動いている。海外ミーティングが控えているのもあって分単位のスケジュールなのにも関わらず華麗にそれを片付けていた。

それにあれから、ちぃと呼ばれることもないし、その件については一言も話していない。

わたしのとってそれはとてもありがたいことで、このまま順調にいけば流れに飲み込まれそうだった気持ちの整理もつきそうだ。


それより、いまは前田さんの件である。
芦沢さんへあんなことをいった手前、ほんの少しは前田さんのことを考えてみたけれど、そこに答えなどあるはずもなく。


「ごめん、お待たせ〜っ」


今日はわたしのほうが先に待ち合わせ場所に着いていた。ウダウダ考えているうちに10時を過ぎている。あと15分ほど遅かったら気兼ねなく帰っていたのに残念だ。


「急な案件入ってバタついちゃって」

「お仕事でしょうか?」

「そうそう」

「こちらへはよくいらっしゃるのでしょうか?」

「そうでもないかな。今日は姉貴のコレクションもあるから」


そして腕時計に目をやり歩き出した。
芦沢さんよりも少し背の高い前田さんだ。
そういえば芦沢さんのお父さんは、前田さんのお姉さんと再婚したといっていたけれど…、その人のことなのかな。


「お姉さまモデルさんなのですね」

「誰がそういった?」

「コレクションとおっしゃられたので」

「寝てたのか? この話するの二度目だよ。電話で話した」


あう。
しょうがないじゃん。
つまらないんだもん。
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