テンポラリーラブ物語
 薄暗い廊下を歩くと前方に明るさが引き立っている入り口がある。

 側には英会話学校であると一目で分かる名称が入った看板が掲げられ、ワクワクとしてくる。

 あそこにジンジャがいる。

 顔がにやけてくるのを抑え、まっすぐ前を見据えるも、いざ入口に差し掛かった時は緊張感が高まった。

 そこでぐっと足に力を込めて、中に一歩踏み込む。

 中に入ればホテルのロビーのような雰囲気があり、英語が所々で飛び交って別世界になっていた。

 受付で挨拶をしてから会員カードを見せ、その日の授業の確認を取る。

 その後は生徒が自由に過ごせる待合室で、授業までの時間を潰す。

 そこは憩いの場にふさわしく、インテリアも統一された座り心地のいいソファーが並べられている。

 目の前はガラス張りの窓がずらっと続き、隣のビルや、下を覗きこめば通りの行きかう車や人が良く見えた。

 退屈しないように大型テレビも置かれ、そこからは常に洋画がいつも流れている状態だった。

 ソファーに背中をもたせかけ、映画を真剣に見ていたジンジャの頭の後ろが目に入る。

 隣にはジンジャの親友の坂井もいた。

 なゆみは迷いなくそこへ向かった。

< 35 / 239 >

この作品をシェア

pagetop