テンポラリーラブ物語
 日曜日はまた違った顔ぶれがあり、平日に来れない人が集まってくる。

 なゆみは辺りを見回した。

 いつも一緒になるはずのジンジャの姿はそこになかった。

 もしかしたら午後から来るのかもしれないと、やっぱりまだ淡く望みを持っていた。

 会いたいのに会うのが怖い。

 来て欲しいけど、来ないような気がする。

 ジンジャのことを思うと、やる気が失せてすっかり意気消沈していた。
 
 朝一番のレッスンを取った後、なゆみはいつもラウンジで暫く過ごす。

 そこはリクエストを入れると好きな映画を流してくれるし、コンピューターも自由に使えて、ゲームもできる。

 ボードゲームもあり、生徒たちが気軽に遊べるようにもなっていた。

 レッスンのない先生が、必ず座っていて、気軽に話しかけることもでき、レッスンを取らなくても充分に英語が話せる空間が作られていた。

 なゆみは日曜日はそれを充分に活用していた。

 だがこの日は、気分が進まず、クラスが終わるとあっさりと帰ることにした。

 先生が「もう帰るの?」と不思議がっている。

 手を振ってバイバイと挨拶して、逃げるように学校を出て行った。

 どこかでジンジャに会うことを恐れていた。


 考え事をしていると、次第に気分が沈んで、背中が丸くなっている。

 迷いと不安と苛立ちが混ぜ合わさった心のもやもやは、脳をすっぽりと包み込んでずしっと重くなっていた。

 自然と頭も垂れて下を向いてとぼとぼと歩いていた。

 まるで背中に「弱った状態」とでも張り紙でも貼っているような分かりやすさだった。

 その態度が 「隙あり」だったのかもしれない。

 そんな時に見知らぬ人に声を掛けられた。

「あの、ちょっといいですか」
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