縁側で恋を始めましょう



「え、なに……」

戸惑っていると暁が顔を上げ、至近距離で見つめてきた。その顔が色っぽくて、ハッとする。

「弟は、こんなことしないでしょう」

やや掠れた声で呟き、妖艶に笑うと再び触れるだけのキスを唇に落としてきた。

「おやすみ」

驚いている私にニヤリと笑うと、そのまま上からどいて二階へと上がっていった。

「……なに、あれ」

掛けられていた重みがなくなり、一気に身体が軽くなった気がしたが、私はその身体を起こすことができなかった。
心臓が壊れるんじゃないかと思うほどうるさく鳴っている。身体に力が入らない。
なにあれ、なにあれ。

あんなの私が知る暁じゃない。

あの男は……。

あの男は、誰だ。







< 51 / 125 >

この作品をシェア

pagetop