今ならやり直せる
元の場所へ
フロントにまた若葉からルームサービスの電話が掛かり、ワゴンを押して部屋へ向かう。

ノックすると若葉が顔を出す。

「つーちゃん!!」首に巻き付く若葉の手を解いて

「こら、こぼれるだろ」と手を制す。

ワゴンから、ブレックファーストセットをテーブルにセッティングし、コーヒーを入れる。

「ねぇ、つーちゃん、今、好きな人とかいるの?」剛の顔を覗き込んでいる。

「まぁね」

「えーっ、この間、帰国したとき、居ないって言ってたよね」と大きな声を出す。

「だから、いちいち、若葉に報告する義務はないだろ?」閉まったままのカーテンを開ける。

「若葉がつーちゃんの事、好きって知っているじゃない!!」と語気を強める。

若葉の正面にいき、言い聞かせるように言う。

「お前は本当に俺のことなんか好きじゃない。優しくしてくれて、自分の言うとおりになるから、そう思っているだけだ。若葉は傷つきたくないだけだ。それは愛情じゃない。本当に好きな人をちゃんと見つけるんだ」

「そんなことないもん。つーちゃんとだったら、結婚できるもん」とふくれっ面をする。

「冷めるから、早く食べろ」

剛の言葉を無視して若葉は続ける。

「今日、ランチ、付き合ってよ。いいでしょ?ホテルのルームサービスも飽きちゃった」

仕方がないと表情で

「わかったよ。業務が一段落したら連絡する。それ、ちゃんと食べておけよ」と朝食を指さして言った。

「はーい」

扉を閉めて部屋を出て溜息をつく。

若葉は、自分に彼氏が居るときは、俺のことは無関心で、彼氏が居ないときは、やたらと嫉妬を燃やすのだから、困ったものだ。

俺の事を自分の所有物と思っているからな。他人の幸せを単純に喜べない子供だから。

あと数日で帰国するし、それまで面倒は見てやらないとな。幼なじみとして。


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