あと一欠片のピース




「今宵!」



そんなわたしたちの会話の邪魔をするべくして、わたしの名前が呼ばれた。


そのどこか艶のある聞き慣れた声は、声の主を見なくてもわかる。



「はよ!」


「出たな、東海道線!」


「まだその名前言ってんのかよ、馬鹿じゃねーの茜。今の俺は千本の光が当たってるって言われてる光王子な。その名前に傷つけんな」


「静まれ! 手前なんて成敗じゃ!」



最近時代劇にはまっているらしい茜は、ババンと戦闘態勢に入り、ナルシスト発言が鼻につく東海道線、じゃないや、海堂千を向かい打つ。


だがしかし、千はそれをすり抜けてわたしの近くまでやってきた。


茜ちゃんドンマイ。



「今宵、今日の夕飯おまえのとこでお世話になるからよろしく!」


「は? 聞いてないんだけど」


「そ? でもおばさんには伝えてあんよ」



えーーー、なんで言っといてくれないのお母さん。


いや別に困らないけどさぁ。


なんか心構えがほしいじゃん。


こいつと同じ食卓でご飯を食べる心構えが。


とは言っても、学校の時ほどキラキラを振り撒かない千は別にそんなに苦手ではないけれど。


それでも、この学校の女子生徒ほとんどが嬉しがるシチュエーションに、わたしはわざとらしく嫌そうに眉をひそめた。




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