運命なんてありえない(完結)
大也side
〜11番〜
幼い時から足が速いのだけが俺の取り柄で高校で始めたラグビーではボールを持って走り抜けトライを決めるウィングとして敵無しだった
大学に入って最初の練習試合で味わった挫折
前半はまだ今まで通り独走していた
後半に入ると徐々に捕まり出した
理由なんて自分で分かりきっていた。
高校の時よりも前後半10分ずつ長い試合時間に対応できていない体力のなさ
相手からのきついマーク
体格の出来上がっている上級生は高校生のタックルとは違い重みがあって余計に体力も削られる
なかなかインゴールまで辿り着けなくなった
得点も巻き返され逆転されてしまっていた
終了間際に味方にきた最後のチャンス
なのに動こうとしない俺の足
「11番走れー!諦めるなー!!」
そんな時に聞こえた声援にハッとした
ウィングの俺が走らないで誰が走るんだよ
精一杯の力を振り絞り今まで以上のスピードで走った
そして思いっ切り「余ったー!」と叫ぶ
『余った』とはラグビーで横一列に並んで攻撃する際に数的有利の状況でボールを呼ぶために使う言葉
味方から飛んできたボールをスピードを落とすことなくキャッチし、さらに加速する
インゴールに入りゴールの後のキックを考えてポストの方へ軌道を変え、なるべく中央に近くなるようにトライを決める
「っしゃぁあ」
練習試合にも関わらず派手にガッツポーズをすると一気にチームメイトが突っ込んできた
「ナイス大也ー!」
高校で言われ慣れてきた言葉が純粋に嬉しく感じる存在を認められた瞬間