ふたりで

正直に言えば、食事だけでも、行ってほしくはない。でも、啓太君の手前と言われれば、行かないでとは、言えなかった。

「わかった。話してくれてありがとう。」

「食事が終わったら、連絡するから。」

きっと私を安心させたくて、そう言ってくれるんだろうな。

何も心配しないわけはない。こーちゃんの方に
彼女への気持ちがないのは、わかってる。でも、私の中のモヤモヤは、消えない。

「彼女って、どこに滞在しているの?」
言ってしまってから、つまらない事を聞いたなと、思ったが、
「津山の部屋に暫く泊まるって。」

暫くなんだ。 じゃあ、食事も一度とは限らないかも。

普段は感じない、自分のイヤな部分が見えてくる。
そんな女は嫌いなはずなのに。
性格の醜い女には、なりたくないのに。

そんな私を、こーちゃんの前では、絶対にさらけ出したくない。

「じゃあ、食事楽しんできてね。今夜連絡待っているね。」
そう答えるのが、精一杯だった。
これ以上一緒にいれば、醜い私に気付かれてしまいそうで、私はさっさと、こーちゃんの目を見ずに帰宅した。

その夜、こーちゃんからの連絡は、なかった。
< 33 / 90 >

この作品をシェア

pagetop