ふたりで

俺は、真愛にも、今夜の食事について話した。後から変に誤解されたくないからだ。


話を聞いた真愛の態度が、よそよそしかった。
真愛が直ぐに納得したことも、ホッとするよりは、なぜか物足りない気がした。
俺は、多少は、おもしろくないと言う態度を、
とってほしかったのだろう。



その夜、おしゃれなイタリアンで、食事をした。さやかは、父親が会社を経営していて、割りとお嬢様だ。
だからか、高級志向が強い。よく、啓太が彼女にしたなあと、実は不思議だった。


俺は、いたって庶民派だから、気取った店は苦手だ。まあ、今夜だけだから、付き合うが。

「芝宮君、久しぶりだね。」
と、瀬川がはにかみながら言ってくる。

「元気だった?」
と無難に返した。

お互いに近況報告して、話が終わりそうになった時、津山が、
「芝宮君、せっかく奈津美がこっちに一週間もいるんだから、どこか、連れて行ってあげてよ。」
と、俺に話を振ってきた。

「悪いけど、俺は、毎日バイトがあるから、まず無理!」
とちょっと冷たく、返答した。

「えー! 1日くらい何とかならないの? せっかく奈津美が来てるのに。」
と、引かない津山に、啓太が、
「さやか、無理だって言ってるだろ。幸大には幸大の予定があるんだよ。あきらめろ!」


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