【短】 友よ 大切な人よ
友よ





______



うだるような暑さ。



激化する戦争。



果てしない戦い。



そのなかで、救助隊がこない。



もう見限られたことが、

嫌でもわかった。



疲弊しきったなか、敵兵に出くわし、

俺は脚をやられた。



「置いて行け」



俺はすぐに言った。



「俺は足手まといだ。

もう自由がきかない。置いて行け」



彼は首を振った。



「ばかやろう!」



俺は吼えた。



「戦地で情けは命取りだ!置いて行け!」



それでも、彼は言うことを聞かなかった。



俺は、彼の胸ぐらを掴むと、

思いっきり顔を殴った。



「目を覚ませ!」



彼は、口の端から流れる血を拭うと、

俺を殴りかえした。



俺の口の中も切れた。


ヒリヒリする。



彼は、何も言わず、俺をおぶった。


万が一の時のために、長剣を渡された。



彼は銃と手榴弾を持ち、

戦地の中でかき集めた僅かな銃弾を、

目一杯詰め込んだ。



馬鹿だ。


本当に大馬鹿だ。



彼の背中の軍服がボロボロなのをみながら、

今までの言葉が、頭の中をよぎった。




__生きて帰るぞ



__この闘いは、まだ大きな戦争の皮切りだ。

命を無駄に落とさなくていい。



__未来のために。今は生きなければならない。



__歯を食いしばって生き伸びろ!



__お前だけは死なせない。





俺は、その背中に顔を埋め、

小さく泣いた。





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