プラネタリウム
北斗の「おはよう」で始まる朝。

気持ちがいい。

学校にいる時は一緒だったり、友達と居たり。

私はほぼりこ。ほぼじゃなくりこのみ。
たまに話す隣の席のたまきちゃん。
芸人さんみたいなおもしろい子。

少しずつ慣れていった学校生活。

夏休みまでカウントダウン。

の前にはテスト。

頑張らなきゃ‼

このテストが終わればパラダイスだ。

しかも待ってました‼
今日はついにケータイ買いに行く日。

放課後職員室に用事あるからと北斗を待って教室にいた。

教室から見える色んな人。
楽しいなぁ…。

しばらくして足音がした。
北斗だと思って振り返った。

…さゆり…
教室に入ってきた。
不気味に笑いながら…。

「北斗待ち?」

…………

「無視?…まぁいいや。あんたさ、りくと知ってるよね」

ドクッ…ドクッ…ドクッ…

思い出したくない男の子名前。
決められた彼氏の名前…。

「見た目はそこそこだけど、何しても反応なくてつまんなかったって。」

世間は狭いものだ。
よりによってこの子と繋がっちゃうの?
私…本当に運がない。

だけど何もいい返せない私はただ下を向いてしまった。
言われた事を認めたようなもの。

だって好きじゃなかったから…。
だからって付き合った私も悪い。
周りに流された結果なんだし、りくとだけが悪いわけじゃなって事もわかってる。

だけど、一人になりたくなかった。

私を使って楽しんでただけの子達。

それでも私は一人になりたくなかった。

周りに誰かいるってだけの安心感。

でも家に帰ると、何言われてるのか不安で仕方なかった。

そんな事を考えるのに疲れておねだりしたプラネタリウムだった。
少しは気が紛れたし、暗くしなきゃ見えないから昼間カーテン閉めても、泣きたい日は夜電気つけなくても親に気付かれずに泣く事ができた。

まさに救世主。

この場は上手く乗り切りたい。
せっかく掴んだ恋…。
こんな事で失いたくない…。

私はグッと手を握って声を出そうとした。
その時、「都合よく使われてたなんて北斗には知られたくないよね?しかも私今りくとと付き合ってるの。」

「そうなの。よかったね。」

精一杯。やっと出た言葉。

「ふざけんなよ。よくないし。返してよ…北斗」

「……それは無理」

「りくとと付き合ったのは、あんたの事知りたくて。」

何で?どう私にたどり着いたの?

「私さあんたの事よく知ってるくるみといとこだし」

そういう事ね…。
世間は狭い。

くるみはグループの中心の子だった。
逆らう子はいない。
見た目も純粋そうで、誰も嫌だと思っている子はいなかった人気者。

ない頭フル回転…。
思い出したくない事が次から次に浮かんできた。
まるで映画観てるみたいに…。

ざわざわする胸。

「私は今でも諦めてないよ。りくとにまた遊んでもらえばいいのに。この学校に逃げてきた負け犬のくせに…生意気なんだよ。」

その通り…。
もういい。言葉返せない。

その時だった…。
「おまたせ‼」

何事もなかったように北斗が教室に入ってきた。

「さゆりって暇人なの?」

「はぁ?私は…」

「あかねの過去知って何したいの?」

この低い声…2回目…。

「北斗、この子の過去知ったら嫌になるよ」

「過去なんて今の俺に関係ある?俺達に過去はいらないから。」

「……………つまんないの‼」

そう言って去って行った。

北斗に言われた…。
「負けんなよ‼前向け‼俺いるじゃん…逃げないから」

嬉しかった。
抱きついた。

自分から起こした初めての行動。

もう少し…もう少しだけ…このままで…。

「あかね?痛いよ。足…踏んでる」

はっ‼嘘…。
恥ずかしくて顔が熱くなる。

北斗は爆笑してた。

「ごめん…」

ずっと笑ってる。
そんなに面白い?
気付けば私もつられて笑ってた…。

「あっ‼お母さんと待ち合わせ…」

急いで学校を出た。
今日は北斗と同じ駅で降りた。
お母さん発見。

北斗とつないでる手を無意識に離そうとした。
でも…離してくれない…。
お母さんに見つかっちゃう…。

お母さんは少し驚いていた。

でも…でもね…

「あかねさんと仲良くしてます。成瀬 北斗です」

「佐藤 あかねの母です。あかねと仲良くしてあげてくださいね。この子最近明るくなったのはあなたのお陰かな…ありがとう」


えっ?待って…お母さん気付いてたの?
あえて聞いてこなかったの?

今思えば学校で何があったかとか聞いてくる事なかったかも…。
唯一…お化粧似合わないねってだけ言われた。
だよねって返事したっけね…。
なんか泣きそう。
最近は涙腺が弱くなったなぁ…。

「では僕はこれで…あかねまた」

ひらひら手を振って北斗は帰っていった。

母は「イケメンというよりかわいいね」って。
くしゃって笑うときにに出るえくぼが好き…。

だから幼く見えるのかな…。
「彼氏?」

私は「うん、大事な人…」

母は「青春だねぇ…うらやましい」って笑ってた。

ショップに近づいた時父がこっちを見て手を振っていた。

母よ…さっきの話しは…ってもう言っちゃってる…。

父は「お父さんも会いたかったな」

えぇぇぇぇ‼
何このアットホームな感じ。
生意気にとか言わないの?

「ケータイ欲しい理由はそれか?」

と父は謎がとけました感半端ない。

「まぁ…それかな…」
私はそれくらいしか言葉がでてこなかった。
恥ずかしくて…。

慣れてないし…こんな空気。

父イチオシのスマホに決定‼
色は黒。ケースも買った。

電話帳は3件。
自宅。
父のケータイ。
北斗。

操作が全く分からないから北斗に連絡してみた。

「はい…」

初めての聞いた…電話の声。
近くに感じる。

「あかね…ケータイ買ったよ」

「あかねだと思ったからでた…」

何気ない言葉で…簡単に私を引き込んでいく。
確実にどはまりしてるのは私。

それでいい。
時々ある痛みすら心地よく感じる。

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