プロポーズ(第4話)
プロポーズ(第4話)


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「えーーっ、お兄ちゃん、結婚するのーーッ?」


あたしは思わず大声を出し、お母さんにたしなめられた。

土曜日の夕方、我が家での夕食どきだった。お父さんと、お母さんと、あたしの三人でテーブルを囲んで、夕ご飯を食べている。

東京で働いているお兄ちゃんから、今日連絡があったそうだ。結婚するつもりの女性を明日、家につれてくるという。


「なにそれ。ずいぶんと急なんじゃない? もっと前もって連絡してくれないとだめでしょ?」


あたしが口をとがらせると、お父さんとお母さんは微妙な顔つきで、目を合わせた。

あれ、なんだろう。なにかあるのかな。

とは思ったけど、続けた。


「だいいち、お兄ちゃん、まだ二十五じゃない。結婚て、ちょっと早いんじゃない?」


近ごろは晩婚化とかいうことで、三十過ぎて結婚する男性が多くなった。そんな話をなにかで読んでいたので、一応そんなふうに言った。

それが建て前だということは、自分でよくわかっている。

あたしはお兄ちゃんが結婚するというので、うろたえている。大好きなお兄ちゃんをほかの女に盗られるのが、はっきり言っていやなのだ。




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