プロポーズ(第4話)


     5


ある日の放課後。

あたしは屋上へ出てみた。

だれもいなかった。

フェンス越しに、野球の練習をしているグランドや、テニスの練習をしているテニスコートが見おろせた。その向こうには、あたしの住む街の家並みが続き、さらに向こうには小高い山が見えた。

空は、山の上側ではちょっとかすんでいるけど、真上には雲ひとつもない。青い空がとても透きとおっていて、めまいがしそうなほど高くて、なんだかちょっと切なかった。

ううん。ちょっとどころじゃないな。ずいぶん切なかった。

あーあ、カバサワもほんとバカサワだなぁ。こういうシチュエーションで口説いてくれたら、落ちたかもしれないのに。


「ふーん、そうか、今なら落ちるのか」

「んげっ?」


あたしは一メートル跳びあがって、二メートルうしろへさがった――ような気持だった。


「カバサワ、なんでここにいる?」

「いや、お前が屋上へ行くのを見たから、なんとなくついてきた。で、いいことを聞いたってわけ。今なら、お前、落ちるんだな」

「う……」


どうやら思ったことを口に出していたらしい。

カバサワがあたしの手をにぎって、歩きだそうとする。


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