忘却
俺は誰だ。

また、同じ夢を俺は見ている。

俺は誰だ

俺は何も無い真っ黒な世界で『俺は誰だ』と、言い続ける夢をある時から見ている。
ある時とは、昔の記憶が無い事に気がついた頃だった。
自分が分からなくなり『俺は誰だ』と鏡の前で言った夜の日からだ。

俺は…誰だ?

いつもと違った反応だ。
いつもはずっと目が覚めるまで『俺は誰だ』と、問い続けている。なのに、
今日は違う。

俺は…

本当に夢でも自分が分からなくなってきそうだ。

君は…忘れてる

身体が動かせれる。いつもは俺を遠くから見ている三人称の様な感じなのに。今日は自分の身体であり、動く。

君は…忘れた…だけ

君は…誰?

俺は…佐野宮 冬夜(さのみや とうや)。高校一年だ。そう言うアンタは?

私?…私はね。鳴島 愛心(なるしま かなみ)。覚えてないと思うよ。

そう彼女が言うと、俺の真正面に現れた。
茶髪のショートで、少しアクセサリーを付け、俺の学校と同じ制服を着ている。

愛心?

ほら、覚えてない。



君が進もうとしないから。
過去を消して、無くして、自分からわすれさせて。
案の定、君は夢で自分を問い続けてる。
進んでくれるなら。教えてあげる。
君が忘れている中で大事な記憶。忘れるきっかけになった記憶。



どうする?

俺は…過去を知りたい。どうして消してしまったのか。全てを。

それじゃあ、教えてあげるね。
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