エリート専務の献身愛
 タクシーに乗せられて数十分。到着するなり、典雅な建物に圧倒される。
 石造りの重厚感ある入り口。建物自体はシンプルに見えるけれど、照明や装飾が西洋風のレトロなデザインのもので、一瞬異国にいる気さえした。

 ふと、目に入ったローマ字を辿る。

 Camellia……ホテルカメリア!?

 文字を読み取り、驚愕する。

 カメリアって、ものすごく有名な高級ホテルだ。存在は知っていても、こんなに間近で見たことはない。

 私は大きな目をして、震えるように首を横に振った。

「カメリアだなんて……! 浅見さんはともかく、私は場違いです!」

 高級感が半端ない! 日本だけでなく、各国の著名人が訪れているってテレビで観た。まだロビーでもないのに、雰囲気にのまれている庶民の私が、こんなところ入れない。

 浅見さんは足を止めた私の手を取る。そして、軽く握って微笑んだ。

「そんなことない。瑠依はもっと自信を持てと前にも言ったはずだよ」
「だ、だけど、こんな仕事後の格好で」

 どもりながら自分の姿を確認し、訴える。

「オレは瑠依のスーツ姿は好きだし、そのままで構わないけれど、やっぱり瑠依は気にする?」
「そりゃあ……」
「それは心配無用。そういうと思って、用意しておいた。行こう」
「えっ?」

 浅見さんの自信に満ちた顔はいつもだった。
 彼が口の端をニッと上げ、少し強引に手を引くのを見て思い出す。
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