雨が降ったから僕らはキスをした。

「しっかしお前が恋とはな〜」


学校での移動教室。筆箱を放り投げながらだらだらと廊下を歩く。


「だからしてないって言ってんじゃん」



「なになになに?しゅうが恋!?まじで!?応援するぜ!」



みっちーのでかい声を聞きつけたクラスメイトたちがわらわらと集まってくる。


あのしゅうが恋?と瞬く間に広まっていくのを否定するのもめんどくさくなって早足で歩いた。



「ごめんってしゅう」

すぐさま追いかけてきて僕の隣を歩き出すみっちー。


「別に良いよ」


どうせ僕の噂だ。1日も経たないうちにみんな興味もなくなるだろう。




「お前はさ、どんな女子がタイプとかあんの?」


「え?タイプ?」


間抜けな声を出してしまった。タイプってあれのことだろ。優しい子が好きとか面白い子が好きとか。



「なんだよ、その声」




「考えたことあんまりなかったから…。んー強いていうなら頑張ってる子が好きかな」



僕がそう言うとみっちーはぶはっと吹き出した。

「な、なんだよ」

「頑張ってる子とか…聞いたこともねぇわ。ま、お前らしくていいんじゃねーの」


笑いをこらえきれずにいうものだからなんとも説得力がない。


「悪かったね、僕らしくて」


全く失礼なやつだ。
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