好きになれとは言ってない
「ええっ?
 どうしたの?

 っていうか、私が改めなきゃと思ってんのに、あんた、どっちの方向に向かって改めてんのよ、落ち着きなさいよ」
となだめられた。

 面白いものだ。
 誰かひとりが取り乱すと、他の人間は冷静になるものらしい、と思いながら、
「とりあえず、まどかさんに勝たなければっ」
と呟くと、

「誰なのよ、まどかさんって」
と興味津々言われてしまう。

「インコのまどかさんですっ」

「……インコ?

 なんなのよ、インコ。
 どうしたのよ、インコ」

 インコの名前だとわかっているのに、『まどか』という女性的な名前が嫉妬を誘う。

 いや、別に私が課長を好きだとか言うわけではないんですけどっ!

 そんなことを思っている間にも、航がやさしくインコの名を呼び、世話している姿が頭に浮かんだ。

 とりあえず、今まで課長がインコのまどかさんを呼んできたより、たくさん名前を呼ばれたいっ。

 という、しょうもない決意を遥は胸に秘めた。






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